続がん50話 看護・薬剤編
01 病気を治す力と手助け
若林榮子
約25年前の話です。ある病院に入院されていた男性の病室で、いつもはもの静かなこの男性が「僕は自分の意思でなら生きたいと思う。が、人の意思によって生かされたくはない」といい、いきなり手の静脈に入っていた持続点滴(24時間持続する点滴の静脈注射)の注射針を乱暴に引き抜かれました。
男性は胃がんの手術をしましたが、再発して食事が食べられなくなっていました。とても理解力のある人でしたが、家族の希望により病名は告知されていませんでした。治療方針は家族と主治医の間で話し合われていました。今は、病名告知はあたりまえになっていますが、その時はそうではなかったのです。
同じころ、がんによる痛みが激しく、痛みを我慢することに必死で何も考えることができない、動くこともできない患者さんがいました。モルヒネの使用により痛みがなくなると患者さんの顔に笑顔が戻りました。
そんな患者さんとの出会いにより、私は考えさせられました。「生きるというのはどういうことなのか。看護師の私には何ができるのか」と。
病気を治すのは患者さんご自身の力です。医療者はその手助けをしているのです。「がん」と告げられた時から、治療の過程で起こるさまざまな心とからだの問題に対して、患者さんとその家族を支援していく役割を看護師、薬剤師は担っています。
これから毎週、みなさんに知っていただきたい情報や私たちの仕事などについてお話ししたいと思います。
