情報提供:大阪府立成人病センター

大阪がん情報提供コーナー

続がん50話

19 治療の未来を開く

大阪府立成人病センター研究所
病態生理学部門長・医師・高橋克仁、同研究所主任研究員・薬剤師・山村倫子

がん細胞の内部だけで増殖し、がんを破壊するウイルスを使った新しい遺伝子治療法の臨床試験が欧米で始まり、成果を上げています。

新治療法は、ウイルスの病原性をなくし、特定のがん細胞の中だけで増殖するように遺伝子を改変したのがポイントです。ウイルスそのものが、がん細胞を直接内部から破壊しますが、正常な細胞には働かないように工夫されているので、副作用も少ない利点があります。また、抗がん剤や放射線治療、免疫療法などと併用すると、その効果が増強されるため、例えば抗がん剤の投与量を減らすことができ、手術前後の補助療法としても使える可能性があります。さらに、抗体や細胞医薬などの従来の生物医薬品に比べて製造コストが安いという利点もあります。

東京大学で脳腫瘍(しゅよう)、当センターで肉腫・悪性中皮腫・消化管間質腫瘍(GIST)を標的にしたウイルス医薬品の開発が進んでいます。岡山大学と名古屋大学のグループは、バイオベンチャー企業の主導で米国での治験を進めています。国内では今年4月から厚生労働省の高度医療評価制度が始まり、評価を経た先進医療を特定機能病院で実施できる仕組みが整えられつつあります。

当センターでは2005年、病院に遺伝子治療用処置室を、昨年、研究所に無菌的にウイルスを製剤化するための装置を設置し、難治の肉腫と中皮腫を対象にした臨床試験を計画しています。