情報提供:大阪府立成人病センター

大阪がん情報提供コーナー

続がん50話

14 したたかさに挑む

大阪府立成人病センター研究所生物学部門長
伊藤和幸

がんがすみかを作るには、酸素と栄養が必要で、直径3ミリ以上の大きさになるためには新たな血管を作って補給路の整備をします。

興味深いことに、原発巣と転移先には「種と土」のような相性があり、大腸がんは肝臓へ、肺がんは脳へ、乳がんや前立腺がんは骨(骨髄)へよく転移しますが、これらは転移先の組織が分泌する「ケモカイン」と呼ばれる物質と、がん細胞の表面に発現するケモカインと結合する受容体の関係で決まると想定されています。

では、がんの転移はどのようにして治療できるのでしょうか。

コラーゲン分解酵素の働きを抑える薬や、ケモカインが受容体と結合するのを妨げる薬など、がん細胞を標的とした治療薬が開発されてきましたが、効果は限定的でした。

その理由としては、がん細胞が均一ではない集団からなるため、一つの薬でやっつけても、それが効かない別の集団が増えてくるといったことなどが考えられます。がんはしたたかなのです。

現在、世界で認可されている治療法は、新しい血管を作るためにがんが出す物質を標的としたもので、がんではなく宿主(ヒト)側の血管新生を抑制し、兵糧攻めにするものですが、これも効果は限定的です。

転移の仕組みが詳しく分かりつつある現在、転移を抑制する新しい治療を目指して、世界中の研究者が知恵を絞っています。