続がん50話
13 転移は最も悪性
伊藤和幸
がん細胞はどんどん増え続けるだけでなく、周囲の組織へ広がり(浸潤)、血液やリンパの流れに沿って、遠くの臓器へ引っ越して、またそこですみかを作って大きくなります。これが「転移」と呼ばれる現象で、がんができた場所(原発巣)のコントロール(外科治療、化学療法、放射線治療など)がうまくいっても、最終的に転移巣が大きくなって、予後(病後の経過)が不良となります。まさに、「転移を制するものはがんを制する」というくらい、転移は悪性化の最たるものです。
今回は、最も頻度の高い血管を介した転移の仕組みとその治療薬についての最新の話をします。
原発巣で大きくなったがんの塊は一様ではなく、その中で運動能力や周りの組織を破壊する能力(細胞の移動を妨げるがんの周りのコラーゲンなどの繊維組織を分解する酵素を作り、分泌する能力など)を持った一群の細胞が周囲へ浸潤し、血管壁に近づきます。
外側から血管の内側に侵入した細胞群(2~10個)は血管内で血液細胞と塊を作り、血流に乗って、転移先の臓器へ運ばれます。この血液内のがん細胞はがんの初期から出現しており、患者さんの血液1ミリリットル中に5~1000個流れていることが最近の研究で分かってきました。
やがて、転移先の血管の内側に接着した細胞塊は大きくなり、血管を内側から破って臓器内に侵入し、新たなすみかを作っていきます。
次回も転移とその治療について。
