続がん50話
11 バイオマーカーとは
宮本泰豪
今回は「バイオマーカー」について述べます。
バイオマーカーは血液中や尿中、あるいは身体の組織の中に含まれる物質で、身体の状態を知るうえで定量的な指標(マーカー)となるものです。物質としては遺伝子、たんぱく質、ペプチド(たんぱく質の断片)、脂肪や糖質などの小さな代謝物などがあげられます。肝臓の機能を調べる際のGOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)やGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)もよく知られているバイオマーカーです。糖尿病の診断に使われる血糖やヘモグロビンA1c、動脈硬化に関連するコレステロールなども、広い意味ではバイオマーカーと言えるでしょう。
近年、新しいバイオマーカーの探索研究が盛んに行われています。その背景の一つとして、科学技術の発展、とりわけ、たんぱく質などの高分子物質の質量分析技術が飛躍的に向上したことがあげられます。
02年のノーベル化学賞に、たんぱく質の質量分析法の確立に大いに貢献したとして、2人の科学者(1人は島津製作所の田中耕一氏)が選ばれたことは記憶に新しいところでしょう。
血液や尿中で、バイオマーカーの候補のたんぱく質が発見された場合、たとえそれが極微量であっても、質量分析法を用いることにより、どのようなものであるかが比較的容易に見極められるようになりました。
病気の状態を客観的に評価できるバイオマーカーが発見されれば、診断、予防、薬の有効性の判定、予後の予測、さらには新薬開発などに応用できることが大いに期待できます。
新しいバイオマーカーの発見、それに続く臨床への応用は、21世紀のバイオ産業を支える基盤となる可能性を秘めています。それゆえ、世界の大学や企業などではさまざまな疾患のバイオマーカー探索に力を注いでいます。
次回はがんのバイオマーカーについてお話しします。
