がん50話
12 食道がんの外科手術
矢野雅彦

食道がんは、胃がんや大腸がんに比べてリンパ節転移を起こしやすいのが特徴です。手術では、食道にできたがん(原発巣)だけでなく、転移している可能性のあるリンパ節も切除(リンパ節郭清)します。 胸部食道がんは、頸(けい)部、胸部、腹部と広範囲のリンパ節に転移を起こすので、これらを取り除くことが標準手術となっています。 リンパ節転移がほとんどない早期食道がんは手術の対象とはなりません。一方、進行した食道がんは手術だけでなく、化学療法や放射線療法などを組み合わせる「集学的治療」を行います。 胸部食道がんの手術は、開胸、開腹、頸部切開と3カ所の切開が必要です。食道は頸部食道以外の大部分(胸部と腹部食道)が切除されます。切除後は、胃を食道の代わりに持ち上げて、頸部食道とつなぎ合わせます。 これで食物はのどを通って、すぐに胃の中に入ることになります。手術直後は肺炎や縫合不全、声を出す反回神経のまひなどの合併症がある頻度で起こりますが、術後の管理が進歩したことなどで、手術成績は年々向上しています。 私たちの施設の最近の手術死亡率(術後30日以内の死亡率)は1%未満にまで低下し、手術後にがんが再発しない状態での「5年生存率」は約50%にまで向上しています。 また、術後に食べ物をのみ込むことが難しくなることや食事摂取の問題については、外科医だけでなく、栄養士や薬剤師、看護師を含めた栄養サポートチームが対処しています。
